デザインとアート。

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1907年に建てられた登録有形文化財浜寺公園駅

わけあって大阪に帰省していました。
電車に乗る必要があったので、せっかくならと、
阪堺電車(いわゆるチンチン電車。通称:チン電。)に久々に乗り、
終点の浜寺公園に向かいました。

大阪に36年住んでいたので、
ある程度のメジャーなことは知っているつもりでしたが、
そこで新事実に出会います。
チン電の南側終点は浜寺公園の前に停まるわけですが、その駅名は

 

浜寺公園駅前駅」

 

駅に「〇〇駅前」と名付けるとは、なかなかシュール。

で、ここから南海電車に乗り換えるのですが、
駅の様子が様変わりしていることに驚きました。

木造で味のある駅舎が閉じられ、新しく生まれ変わっていました。
写真は、新駅舎の横にひっそりと建つ旧駅舎。

調べてみると2016年には、使用を終了しているようでした。
通過駅のため知らなかったのか、
はたまた、およそ6年前には知り得たが、忘れていたのか。

子どもの頃よく利用していて、単に愛着があっただけでなく
ずっと建物に古き良さを感じており、
いずれにせよ、現在は哀愁を帯びていました。

 


 

大阪に滞在中ケーブルテレビで、興味深い番組が放送されていました。
大阪が世界に誇る建築家安藤忠雄さんが「こどもの本の森」という建物を、
中之島に建てたということを紹介する番組です。

安藤建築らしく、
緻密に計算された視界の誘導、
コンクリート打ちっぱなしの外観、
遊び心あふれる内装に壁一面の本、
とてもワクワクする建物です。

そんな建物、安藤忠雄の提案のもと、実は全額寄附で出来ているそうです。
運営費は公募の寄附、建物と設計はなんと安藤忠雄さんの寄附。

ご自身は2度も癌を経験し、重要な臓器を摘出して....と、
この状況だけ聞くと、自分が生きることでやっとのことだ、
と想像してしまいます。

しかし、彼は80歳になった今も人を魅了する設計をし、そして
大枚をはたき、地元大阪市に「こども本の森」を寄贈したのです。

実はこれまであまり、安藤忠雄さんのことを知りませんでした。
淡路島にあるホテル淡路夢舞台や、住吉の長屋など
少し建築には興味があるので、
建てたもののことは、知っていはいましたが、
その番組のおかげでガラっと印象が変わりました。
で、さっそく買った絵本です。

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子ども向けにつくられていますが、
大人にもぜひ読んでもらいたい一冊。

「やくわりばかり かんがえて たてものを
 つくっていたら どうなるとおもう?」

そんな問いかけに、ぐぐっと惹き込まれます。

 

こども本の森安藤忠雄さんが宛てたメッセージからは
強さと優しさが滲み出ます。

安藤忠雄氏メッセージ

 

先日出会った書籍「考えの整頓」の中で、

デザインとは「よりよく生きるための方法」であり
アートとは「なぜ生きるのか」ということ自体から考えることである

と著者の佐藤雅彦さんは説明されていました。

建築とは、その両方を最も身近に感じ、
考えさせられるものなのかも知れません。


このコロナ禍であり、「こども本の森」の入館には予約が必要となっていました。
2年前の日常のように、人の行動に制限のない世の中が取り戻せたら、
ぜひ足を運びたいです。