天丼。
本ブログ「人生これから」という名は、どこのどなたが言ったか覚えていないが、「いまが一番若い」という言葉に感銘を受けたのと、これまで培った人生の負の部分をリセットするために名付けた。
気がつけば今年で36歳。
年配の方には"まだまだこれから"と、若年者には"おじさん"とも言われる。これまで人生の大半は、言われたことを愚直に熟す真面目な対応をとってきた。
その結果、それなりの家も買い、犬も飼い、月に何度も居酒屋へ行き、なに不自由ない生活をしてきたとも思う。
人生の教本である「座右の寓話」という本にこういう話がある。要約してお伝えしたい。
夢を見ている1人の男がどこか遠いところにいる。そこには白衣を着た人がおり、望むものをなんでも叶えてくれる。
美味しいものが食べたいと伝えれば、極上の食事が用意され、演劇が観たければ、最高の演劇を見られる。
しかし、男は与えられるばかりに飽きてしまう。そして白衣を着た人にこう尋ねる。
「私は何かをしてみたい。」
それを聞いた白衣の人はこう答える。
「それだけは唯一叶えられない事柄です。あなたは一体、ここをどこだとお考えだったのですか。」
この寓話の舞台が、どこかお分かりだろうか。
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この寓話の舞台は、
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「地獄」である。
日々世の中は便利になっている。
便利すぎて、その便利を使い熟すのに不便を感じている人もいるぐらい。紙幣・硬貨は電子化し、当たり前に物は自宅まで届き、それでも飽き足らず、消費者はそれを求め、より高度なサービスや技術が生まれる。
人はどこに向かっているのか。
何を求めているのか。
考えれば考えるほど、酒がすすむ。
そんな日々を送っている中、隠岐の島に住んだなら一度は食べるべきと教えてもらっていた「ポーレスト」というレストランの天丼を食した。
この茶碗は、小さい茶碗ではない。
普通の"どんぶり"である。
草履のような水菜の天ぷらがそそり立ち、戦を挑んでくる。
かぶりつき味わうと、(失礼ながら意外にも)美味しい。
安倍首相の緊急事態宣言のLIVE配信を、店のおっちゃんと共に片目で観ながら、天丼と向き合う。
序盤が過ぎ、水菜が半分程度になったところで気づく。
「一体、何と戦っているのだ。」
これは地獄か天国か。
お金を払うことで、食べ切ることに苦労する贅沢ができている。それはなんだ。
思考とは別次元で、時間が勝敗を分けると気づいた私は、手を休めず、口を止めず、しかし思考は停止し、動き続けた。
"歩く"は、"少し止まる"と書く。少しずつ止まりながらでも動くことが大切なのだ。
道半ばで「もういい」と思いながら、食べ切った。
食べきることがつらいなんて...と思う反面、無理して食べることへの罪悪案を覚える。
帰り道。
島で位置すると住まいと反対側に位置する"ポーレスト"を出て、隆起してできた島の、うねうねの、海岸沿いの道を、車は走る。
「マジ、吐きそう。。。」
誰に伝えるでもなく漏れた。暑くもないのに窓を開け、何とか家までたどり着いた。
与えられる人でなく、与える人になりたい。
そんな年頃36歳。