光。
1/5に隠岐の島へ上陸して今日で12日目。
上陸3日後に冷蔵庫とガステーブルを購入。大家さんのご好意で頂いた洗濯機や家具と、持ち込んだ調理器具とで大方の生活ができる状態だった。
ただし、テレビもネットもない環境は相変わらず続いていた。
そこに、まさしく光が差した。つまり、光ケーブルが引かれたのだ。12月に申し込んだもののなかなか工事と在宅の都合が合わず、伸ばし伸ばしになっていた。
朝早く道に迷いながらもやってきた作業員の方の、ケーブル引き込みを眺めていると、家の横の畑で収穫している大家さんと出会い、問われた。
大「大根食うか?」
ち「はい!」
大「その横に抜いちょるやつ持ってけ。ネギも食うか?」
ち「はい!頂きます!」
大「ほれ、持ってけ。」
と、大根とネギを頂いた。「嗚呼、大根とネギ、そして光まで。何でいい日なんだ。」と、感嘆詞が感じになるほど、嬉しかった。
が、ONU(光回線終端装置と呼ぶらしい。光版モデム的な存在。)と、大阪から持ち込んだ無線LANルーターを接続するものの、インターネットへ繋がらない。無線LANルーターへの接続は確認できている。
何度もIDを入力し、何度もパスワードを入力。あの手この手で立ち向かうも、一向に繋がらない。格闘すること1時間。そろそろ嫌になってきた。誰か詳しい人はいないものか、と頭の中で知り合い検索が始まった。
- 元AVのモザイクを差し込んでいた現飲食店オーナーのKちゃん。
- 高校時代からエロが頭につまってる梅田の某有名専門学校を主席で卒業したM。
- 元職場システム担当の若きエースOくん。
- 案外知ってるかも。どの角度からみても見た目は海坊主のKくん。
どれも連絡取りにくかったり、意外とこの分野は詳しくなかったりしそうである。
ふと、ここ隠岐の島に来てすぐ、町役場で紹介されたひとりの顔が浮かぶ。立ち話によると、
元ゲームプログラマーで、隠岐の島でゲーム会社を立ち上げ、ゆったりとした時間の流れの中、ゲーム制作に打ち込むのが夢。そしてそれが現実味を帯びてきた。
と、聞いた。
その彼に連絡を取り、状況を説明。親切にも一緒になって問題解決に向かってくれた。順を追ってクリアにしていく。行き着いた答えは、
プロバイダに対応した機種がサイトにUPされてるから、と教えられ検索すると確かにこの型番は、ない。ついでに販売停止の商品である。早く繋ぎたくて、世の中と繋がりたくて、仕方ない私は彼に「繰り出します。」と伝え、20分かけて街へ出た。
島に2つ"も"ある家電量販店のうちのひとつ、◯マダ電機の店員に事情を説明すると、「そんなことあるかなぁ」と首を傾げられた。しかし彼の答えを信じ、これまで使用していた無線LANルーターの4倍もの能力を持った最新型のものを、7,980円で購入。消費税10%を初めて実感し、そして驚き、レジで店員さんに「高っ」と口を滑らす。
これで大丈夫だ。と、ハピネスの曲に包まれながら車は海辺をひた走る。
家に着きバタバタと、床にビニル袋から箱を取り出す。新しいアイテムの封を切るときはワクワクが滲み出る。
かれこれ10年近く使ったであろう必要最低限の無線LANルーターに別れを告げ、明らかにサイズアップし、アンテナも3本立った嗜好品へ入れ替える。プロバイダの契約書を手に、改めてIDとパスワードを入力。入力。入力...
「あかんのかい。」
契約書の裏面に目をやった。サポートダイヤルが記載されている。
なぜかこういうものに絶対ヘルプを求めない主義の私だが、背に腹は変えられない。早く繋がりたくて仕方がなかった。N◯Kの解約電話は何回かけても繋がらないが、こちらはすぐに繋がった。丁寧な物言いで好感が持てる。「担当の今井です。携帯からかけられているようですが、よろしかったら一度お切りしておかけ直ししましょうか?」何とも気遣いのある方だ。もしくは会社だ。「ぜひ」と受け答えた。
状況を説明し、電話先の端末で調べるも「何も悪いところはなさそうです。」と仰る。
10年ほど前からiPhoneを持ち、その美しさ故Apple信者になった私は、iPhoneのスピーカーでオペレーターの今井さんと話しながら、Macbookを弄っていた。
と、その時。
「あっ」と声が漏れる。突然、Googleの画面が開いた。「なぜか繋がりました。」
今井さんは「無線LANルーターの設定にタイムラグがあるんですかね。」と咎めることなく、優しい言葉が聞こえる。
光が差し、温もりまで届いた。
「人生これから」の