お見送り。

隠岐の島には、離島ならではの素敵な風習がある。
大きなお子さんをお持ちの方で地元から離れた大学への進学、就職による一人暮らしのスタートや、友人の遠方への転勤などで、お見送りの経験をされた方も多いと思う。
家の前や駅での見送りはそこまで珍しくないだろうが、駅あっても別れのシーンは"改札前"を思い描く人も少なくはないのではないか。

 

この小さな島では、そのお見送りの仕方が異なってくる。
先日、卒業を迎えた生徒が学校を巣立っていった。島内で就職を決めた生徒もいれば、県外への進学をする生徒など、さまざまな道を進む。
卒業式を終えたその日から、数日の間に島を離れる寮生は新天地へ向かう。

 

そこで見られる光景が圧巻だ。
在校生や教職員、地域の方々が汽船場に集まり、お見送りをする。
見えなくなるまで手を振る。「がんばれー!」とエールを送る。さらには有志で購入していただいた紙テープ付き。紙テープには「別れの挨拶」の意味が込められているそうで、華やかさをプラスしてくれると共に、3年間のさまざまな思いが紙テープを伝わってくるようにも感じる。

f:id:checkitoutdoor:20200303224947j:image

 

この新型コロナの影響で卒業式に出席できず、休みになった在校生も自転車を走らせ先輩を見送りに駆けつけた。船のそばで寮歌を大声で合唱し、出港と同時に「行こう!」と声を上げ、港の端まで走って向かい、最後の最後まで手を振る。

f:id:checkitoutdoor:20200303234544j:image

 

 

さらに、
隠岐水産高校には、ならではのワンランク上のお見送りがある。
ベテラン教員の操縦のもと、離岸していく船と共に実習船を出す。実習船には「ありがとう」と大きく書かれた横断幕を張り、校歌や卒業ソングをスピーカーから流しながら、教職員が全力で手を振る。他には類を見ないお見送りに、たかだか来て2ヶ月のしかも生徒との直接的な関わり合いがほとんどなかった私の涙腺も緩んでしまった。

f:id:checkitoutdoor:20200303231731j:image

船上は風も強く非常に寒い。さらに先生方は休みにも関わらず、門出を見送りに来られる。

f:id:checkitoutdoor:20200303233636j:image

船から見た様子。

f:id:checkitoutdoor:20200303233609j:image

国際信号旗 "U","W"
これを2つ連ねることで「ご安航を祈る」とゆう意味になる。

 

高校生活が終わり、これから一気に大人の世界へ踏み込んでいく彼ら。
どんなときでも楽しむことを忘れず、少しずつ前に進んでいって欲しい。

幸あれ!