行方不明。

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エイリアンには負けまへん。

 

この物語は・・・

行方不明なり、
見つかったものの、
迎えに行けず、
警察に保護される。

そんな話である。

 

 

4週間前の金曜日、出張へ行った。8ヶ月ぶりの大阪。
前泊の土日を挟んだ月曜戻りため、木金土日と4日間、大阪で夜を堪能できる。
淡々と事実を綴る。 

 


1日目(木)

飛行機での移動のため、伊丹着。前泊日は数年振りに、小学校講師時代の行き付け店へ顔を出した。月日が経つのは早いもので、もう15年前。しかしマスターも店構えも、さして変わらず、懐かしい雰囲気と美味い焼き鳥をビールで何度も流し込んだ。

 

2日目(金)

約1年前まで共に働いていた仲間と合流し、昨年までの行き付けの居酒屋へ。ご夫婦で営む昔ながらのお気に入りのお店に、10人程が集まってくれた。懐かしい味と懐かしい話題が充満した空間に満足し、歩いてすぐの行き付けのワインバーへ。
入店した時点で、酒はかなり身体を支配しており、ほとんど記憶がない。
ワインでしっぽり落ち着くと思いきや、さらに勢いがつき、友人のバーへ。カラオケが設置された愉快な店に、いつも通りベストマッチの友人が迎えてくれた。
この時点で、記憶はほぼ皆無である。
想定通り帰れなくなったため、最後まで付き合ってくれた最も関係の深い友人宅へ向かう。さらに途中のコンビニで飲み切れない量の酒を購入。やはり飲み切れず翌朝実家へ帰った。

主目的の出張内容は、起業に関する研修。ここで特筆することもないので割愛する。

 

3日目(土)

記憶とスマホがない。
昨日訪れたお店に連絡を入れ、忘れて帰ったことを知り一安心。昼過ぎに高校時代の友人と約束があり、一度スマホとは反対の方向へ進む。友人が手配してくれたお店は、広々としたレトロな店。時間帯が昼過ぎということもあり、客足は少なかった。人の多い地区にしては、心配がない。お酒も進みいい頃合いとなったところで、高校時代から友人の親類が営んでいる小料理屋へ移動。昔から何度も話題には出ていたが、一度も伺ったことがなかったのでいい機会だった。

スマホを取りにいこうと友人に別れを告げ、先に店を後にした。昨日の店まで、スマホを受け取りに行き、とんぼ返りでなんとか実家に帰れる、余裕のない時間だった。電車に乗り込み、連日の飲み会に一息つこうと、座ったのがことの発端。誤った。

目が覚めると11時を回っていた。もう数え切れないほど経験している乗り過ごしのため、焦りはなかった。とりあえず電車から降り、駅名を確認する。王寺、とある。どうやら今夜は奈良県のようだ。仕方なくホテルを見つけ、朝まで眠った。

 

4日目(日)

きれいにベッドメイクされたふかふかの布団だったため、すっきりとした朝を迎えた。ロビーに設置されたテーブルで朝食を摂り、実家へ帰る。
スマホを忘れたお店からは「前の鉢植えにビニル袋に入れて隠してある。」との連絡を受けていた。実家の車でお店に向かう。
店の前に駐車し、しゃがんで鉢植えを見る。横の鉢植えを見る。持ち上げて見る。葉をかき分けて見る。一度、立ち上がる。またしゃがんで、見る。

ない。

屋外では店主へ連絡のしようがなく、元自宅の隣人に助けを求めに行った。改めて店主に確認するも、説明は同じ。隣人に礼を言いつつ、つぎに帰省した際の飲み会の約束もして、再度お店へ向かった。
さきほどと、同じことをする。もちろん、ないものはない。
頭をリセットする。「こういう時にはお巡りさんです。」と、右脳が言う。警察署へ行き、遺失届を提出。掛けて待っていてください、と促された。モニタを見ながら検索するも出てこない、そのような声が聞こえた。そこから少し間を空きお巡りさんが近づいてきた。

左手に持っている。外観は間違いない。

顔認証でロックを解除するも、自分の番号の表示を求められた。先ほどの届出と照合する。
偶然にも筆者と同じ名前のお巡りさんは「『お礼も連絡先も伝えなくていいです。』と、おじいさんから預かりました。」と教えてくれた。


 

世の中、捨てたもんじゃない。

スマホも、捨てたわけじゃない。